Search

JP-2026076663-A - 複合体の構造解析方法およびその利用

JP2026076663AJP 2026076663 AJP2026076663 AJP 2026076663AJP-2026076663-A

Abstract

【課題】NMRを用いた複合体の構造解析の新規な仕組みを提供する。 【解決手段】芳香環を有する第1の分子とCH結合を有する第2の分子とを含む第1の試料について前記第2の分子のプロトンのNMR測定における第1の横緩和速度を取得すること、単独の状態の前記第2の分子を含む第2の試料について前記第2の分子の前記プロトンのNMR測定における第2の横緩和速度を取得すること、前記第1の横緩和速度から前記第2の横緩和速度を差し引いてなる横緩和速度の差に基づいて、前記第1の試料が、前記第1の分子内の芳香環の近傍に配置された水素原子を含むかどうかを評価すること、を含む、複合体の構造解析方法とする。 【選択図】図6

Inventors

  • 海江田 修至
  • 佐藤 匡史
  • 西ヶ谷 有輝

Assignees

  • 株式会社アグロデザイン・スタジオ

Dates

Publication Date
20260512
Application Date
20241024

Claims (20)

  1. 芳香環を有する第1の分子とCH結合を有する第2の分子とを含む第1の試料について前記第2の分子のプロトンのNMR測定における第1の横緩和速度を取得すること、 単独の状態の前記第2の分子を含む第2の試料について前記第2の分子の前記プロトンのNMR測定における第2の横緩和速度を取得すること、 前記第1の横緩和速度から前記第2の横緩和速度を差し引いてなる横緩和速度の差に基づいて、前記第1の試料が、前記第1の分子内の芳香環の近傍に配置された水素原子を含むかどうかを評価すること、 を含む、複合体の構造解析方法。
  2. 前記第1の横緩和速度と前記第2の横緩和速度との差に基づいて、前記第1の試料が、前記第1の分子内の芳香環とCH-π相互作用を形成している水素原子を含むかどうかを評価する、 請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1の横緩和速度と前記第2の横緩和速度との差に基づいて、前記第1の試料が、前記第1の分子内の芳香環と6Å以内の距離に配置された水素原子を含むかどうかを評価する、 請求項1に記載の方法。
  4. 前記第2の分子が、前記第1の分子内の芳香環と5Å以内、好ましくは4Å以内、より好ましくは3Å以内、の距離に配置された水素原子を含むかどうかを評価する、 請求項3に記載の方法。
  5. 前記差が所定の閾値以上である場合に、前記第1の分子内の芳香環の近傍に前記水素原子が配置されていると判断すること、 を含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記差が所定の閾値以上である場合に、当該差が前記所定の閾値以上となったプロトンの数だけ、前記第2の分子内の水素原子が前記第1の分子内の芳香環の近傍に位置していると判断すること、 を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記第1の横緩和速度および前記第2の横緩和速度は、 1 H NMR信号に基づいて算出されるものであり、 前記差が所定の閾値以上である場合に、当該差が前記所定の閾値以上である前記 1 H NMR信号が帰属される前記第2の分子内の水素原子が、前記第1の分子内の芳香環の近傍に位置していると判断すること、 を含む、請求項1に記載の方法。
  8. 単独の状態における前記第2の分子の 1 H NMR信号の一部または全部が当該第2の分子内のいずれかに帰属されているかを示す帰属情報を取得し、 前記帰属情報に基づいて、前記第1の分子内の芳香環の近傍に位置している前記第2の分子内の水素原子を同定する、 請求項7に記載の方法。
  9. 前記所定の閾値は、0.05S -1 以上、好ましくは0.1S -1 以上、より好ましくは0.2S -1 以上、より好ましくは0.3S -1 以上、より好ましくは0.4S -1 以上、より好ましくは0.5S -1 以上である、 請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記第2の分子の分子量は、150~3000である、 請求項1に記載の方法。
  11. 前記第1の分子の分子量は、15000以上である、 請求項1に記載の方法。
  12. 前記第1の分子の分子量は、前記第2の分子の分子量に対して5倍以上である、 請求項1に記載の方法。
  13. 前記第1の分子における前記芳香環は、前記第1の分子を構成する芳香族アミノ酸部分に由来する、 請求項1に記載の方法。
  14. 前記芳香族アミノ酸部分は、フェニルアラニン(分子量:165.19)、トリプトファン(分子量:204.23)、ヒスチジン(分子量:155.1546)、およびチロシン(分子量:181.19)からなる群から選択される少なくとも1つである、 請求項13に記載の方法。
  15. 前記第1の分子の立体構造データを取得すること、 前記第2の分子の立体構造データを取得すること、 前記第1の分子の立体構造データにおける芳香環の位置情報と、前記第2の分子の立体構造データにおける水素原子のうち、前記第1の分子内の芳香環の近傍に位置していると同定された水素原子の位置情報と、に基づいて、前記第1の分子に対して結合状態にある前記第2の分子の位置および角度を推定すること、 を含む、請求項1に記載の方法。
  16. 前記第1の試料において、前記第2の分子のモル濃度は、前記第1の分子のモル濃度の3倍以上、好ましくは10倍以上である、 請求項1に記載の方法。
  17. 前記第1の横緩和速度を取得するための 1 H NMR信号および前記第2の横緩和速度を取得するための 1 H NMR信号の少なくとも一方は、CPMG法に基づいて取得する、 請求項7記載の方法。
  18. 芳香環を有する第1の分子とCH結合を有する第2の分子とを含む第1の試料に関する前記第2の分子のプロトンのNMR測定における第1の横緩和速度と、単独の状態の前記第2の分子を含む第2の試料に関する前記第2の分子の前記プロトンのNMR測定における第2の横緩和速度と、を取得する取得部と、 前記第1の横緩和速度と前記第2の横緩和速度との差に基づいて、前記第1の試料が、前記第1の分子内の芳香環の近傍に配置された水素原子を含むかどうかを評価する評価部と、 を備える、複合体の構造解析装置。
  19. 前記第1の分子の立体構造データと前記第2の分子の立体構造データとを取得し、 前記第1の分子の立体構造データにおける芳香環の位置情報と、前記第2の分子の立体構造データにおける水素原子のうち、前記第1の分子内の芳香環の近傍に位置していると同定された水素原子の位置情報と、に基づいて、前記第1の分子に対して結合状態にある前記第2の分子の位置および角度を推定する、構造推定部、 をさらに備える、請求項18に記載の装置。
  20. コンピュータに、請求項1に記載の複合体構造の解析方法の各工程を実行させるためのプログラム。

Description

本発明は、複合体の構造解析方法およびその利用に関する。 医薬や農薬に関する創薬研究では、まず化合物ライブラリーから標的分子である生体高分子と相互作用して薬効を示すヒット化合物の探索を行い、そのヒット化合物に修飾基付加などを施す合成展開を繰り返すことで、所望の物性や薬理動態を持つ化合物を作成する。近年のコンピュータ技術およびAI技術の発展に伴い、この一連の創薬過程において、標的生体高分子と薬剤候補化合物の複合体の構造を解析し、この複合体構造を基に化合物展開を行う構造ベース創薬法に関する研究が進められている。 構造ベース創薬法において、標的タンパク質と薬剤候補化合物の複合体の立体構造を解析する方法としては、X線結晶構造解析法、クライオ電子顕微鏡法、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)法等が知られている。X線結晶構造解析法とクライオ電子顕微鏡法では、低分子と高分子の複合体の電子密度または密度マップを得て、この電子密度または密度マップに対して構造モデリングを行う。一方、NMR法においては、例えば、核オーバーハウザー効果(Nuclear Overhauser Effect:NOE)を利用したNOESY法や転移NOESY法により、分子内および分子間での原子核距離制限を得たのち、該距離制限を満たす構造を計算する(例えば、非特許文献1参照)。 国際公開第2003/057258号 Molecules 25, 2974 (2020)Angew. Chem. 132, 14971-14978 (2020)ChemMedChem 25, e202300636 (2024)Methods Enzymol. 615, 177-236 (2019)J. Med. Chem. 59, 10788-10793 (2016)J. Med. Chem. 66, 10617-110627 (2023)Nat. Chem. Biol. 15, 822-829 (2019) 図1は、CH結合と芳香環との間のCH-π相互作用を例示する模式図である。図2は、外部磁場下での芳香環周辺の誘導磁場を例示する模式図である。図3は、一実施形態に係るNMRを用いた複合体の構造解析システムの模式図である。図4は、一実施形態に係る制御装置のブロック図である。図5は、一実施形態に係るNMRを用いた複合体の構造解析フロー図である。図6は、実施例で得られた、単独状態とNSD3-PWWPに結合させた状態のBI-9321の各1Hについての見かけの横緩和速度R2の差(ΔR2)を示すグラフである。図7は、図6に示したBI-9321の各1Hの分子構造での帰属を示す図である。図8は、一実施形態に係る各1HのΔR2の閾値の設定方法を示す図である。図9は、他の実施形態に係る各1HのΔR2の閾値の設定方法を示す図である。図10は、一実施形態に係るBI-9321の各1HのΔR2のヒストグラムである。図11は、実施例で調整した複合体の、NSD3-PWWP内の芳香族アミノ酸とBI-9321の1Hの間のCH-π相互作用を示す図である。図12は、実施例で調整したNSD3-PWWPとBI-9321の複合体の立体構造を示す図である。図13は、一実施形態に係るBI-9321の各1Hと芳香族アミノ酸の間の距離を示すグラフである。図14は、一実施形態に係るBI-9321の各1Hの芳香環までの距離とΔR2の相関を示すグラフである。図15は、X線結晶構造解析により得られたNSD3-PWWPとBI-9321の複合体データ(PDB ID:6G2O)に基づく当該複合体の立体構造を示す図である。 構造ベース創薬法における初期の課題の一つは、標的となる生体高分子との結合親和性および結合相互作用が強い分子を見つけることである。しかしながら、例えば、創薬研究の初期に探索される低分化合物や中分子などの薬剤候補分子は、標的高分子との結合親和性が低い場合が多いのが実情である。結合親和性の低い相互作用を検出できる手法は限られており、例えば、X線結晶構造解析法とクライオ電子顕微鏡法では構造を決定できない場合がある。 本発明者らは、例えば、親和性の低い相互作用でも高い感度および信頼度で検出可能なNMR法を利用して、相互作用親和性の低い複合体構造を決定することができる、簡便で新しい手法を見出し、本出願をするに至った。 図1は、CH-π相互作用を示す模式図である。図2は、外部磁場の存在下で芳香環周辺に誘起される誘導磁場を示す模式図である。 例えば、近接するCH結合(CH)と芳香環(π電子)との間には、図1に示すように、CH-π相互作用と呼ばれる、分散力に起因する弱い引力的な相互作用が働き得ることが知られている。また、図2に示すように、芳香環の非局在化したπ電子は、外部磁場(B0)によって環電流を発生し、誘起磁場を生じる。 ここで、CH-π相互作用を形成しているCHおよび芳香環に外部磁場を印加すると、芳香環平面に対して垂直方向ないしはその近傍に位置する水素原子については、誘起磁場の方向が外部磁場の方向と逆向きになる(遮蔽効果)。そのため、CHの1H NMRスペクトルは、例えば、単独の場合(すなわち、CH-π相互作用を形成していない場合)と比較して、共鳴する周波数がより低く(より高磁場側に)なる。そして、NMRスペクトルの化学シフト値は小さくなる。したがって、例えば、薬剤候補化合物と標的タンパク質との間のCH-π相互作用は、NMR法における化学シフトの変化によって検出できることがわかる(例えば、非特許文献2,3参照)。 次に、例えば、タンパク質などの第1の分子(P)と、薬剤候補化合物などの第2の分子(L)が、以下のように1:1で相互作用し、複合体(PL)を形成する系を考える。 平衡状態で複合体(PL)として存在する結合型分子の割合をpB、第1の分子(P)と第2の分子(L)が遊離した状態の遊離型分子の割合をpFとする。すると、化合物NMR信号の見かけの横緩和速度R2は、第1の分子に対して過剰量の第2の分子が存在する場合(pF>>pB)、以下の式(1)で表される。 ここで、式(1)中、 ・R2,F、R2,Bはそれぞれ、遊離型分子と結合型分子の(真の)横緩和速度であり、 ・kex=kon[P]+koffを満たし、 konは会合速度定数、 koffは解離速度定数、 [P]は第1の分子の単体濃度、を示し、 ・Δωは遊離型分子と結合型分子との共鳴周波数の差、 である。 第1の分子(P)と第2の分子(L)の親和性が低いとき、kexは、概して大きくなり、式(1)は以下の式(2)で近似することができる(例えば、非特許文献6参照)。 第2の分子(L)が第1の分子(P)と結合し、第1の分子(P)中の芳香環とCH-π相互作用を形成した場合に、第2の分子(L)内のプロトン(1H)は、単独の状態と結合した状態との間で化学シフトの差(延いては、共鳴周波数の差Δω)が大きくなる。したがって、式(2)のΔω2が大きくなることにより、第1の分子(P)と結合したときにCH-π相互作用を形成するような第2の分子(L)内の1Hの見かけの横緩和速度R2は、相互作用を形成していない他の1Hの見かけの横緩和速度R2と比べて大きくなることがわかる。 なお、第1の分子(P)と第2の分子(L)の相互作用のように、単独状態と結合状態が平衡にある系において、単独状態と結合状態の化学シフトの変化に差がある場合、NMRを用いて測定できる見かけの横緩和速度R2が大きくなることが知られている(非特許文献4)。この見かけの横緩和速度R2の変化は、上記のとおり、平衡にある状態の化学シフト差だけでなく、存在比、および平衡解離速度定数kon、koffまたは平衡解離定数Kdにも依存する。したがって、このR2の変化からkoffやKdを算出し、koffやKdに基づいて、第1の分子(P)と第2の分子(L)との間の相互作用を定量的に評価する方法などが提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献5~6参照)。 ここで本発明者らは、この見かけの横緩和速度R2の変化は、NMR測定によって得られるNMRスペクトルに基づいて算出することが可能なこと、また、複合体の形成のために相互作用しているプロトンを同定できることから、複合体の立体構造情報を横緩和速度R2の差を利用して取得することを想起した。 つまり、第2の分子(L)が単独の状態(pB=0)では、R2=R2,Fである。このことから、第2の分子(L)の単独の状態と、第1の分子(P)と結合した状態と、について分子内の1Hの見かけの横緩和速度R2の変化量をNMR測定に基づき直接的に測定し、これらを比較することにより、第1の分子(P)と相互作用(すなわち、結合)している第2の分子(L)内の原子核を把握することができる。例えば、具体的には、第2の分子(L)に含まれる複数の1Hのうち、第1の分子(P)内の芳香環とCH-π相互作用を形成している1Hを同定することができる。 したがって、このような親和性の小さい相互作用を形成する原子核(相互作用部位)は、NMR法によって化学シフトの変化が検出できるものであれば、その分子内での位置等を同定できる。また、第1の分子(P)と第2の分子(L)において、相互作用する部位を同定できれば、これらの分子を相互作用部位が互いに近接するように立体的に組み合わせることで、これらの分子からなる複合体の立体構造を推定することができる。本技術は、このような知見に基づくものである。 以下、適宜図面を参照しつつ、一実施形態に係る複合体の構造解析例を基に、本技術について説明する。なお各図面において、同一の機能を有する構成については、符号の付与と重ねての説明を省略する場合がある。 [構造解析システム] 本技術に係る複合体の構造解析システムは、核磁気共鳴を利用して複合体の構造解析を行うシステムである。この解析システムは、これに限定されるものではないが、本技術に係る複合体の構造解析方法を好適に実行することができる。図3は、一実施形態に係るNMRを用いた複合体の構造解析システム100の模式図である。図4は、一実施形態に係る制御装置103のブロック図である。 構造解析システム100は、概して、1又は複数の磁石部101と、1又は複数の分光計102と、1又は複数の制御装置103と、1又は複数のデータベース104と、を備えている。構造解析システム100は、付加的に、1又は複数のユーザ端末105を含むことができる。これらの各要素は、例えば、有線または無線のネットワークを介して、互いに情報を送受信できるように構成されている。これらの要素は、いずれか2つ以上が一体的に構成されていてもよい。また、これらの要素(特に、制御装置103およびデータベース104等)は、例えば、それぞれが2以上のユニットに分かれて構成されていてもよい。 これに限定されるものではないが、典型的な一例として、磁石部101は、分光計102および制御装置103にそれぞれ、有線を介して接続されている。分光計102と制御装置103は、有線または無線を介して接続されている。制御装置103とデータベース104は、有線または無線を介して接続されている。磁石部101、分光計102、および制御装置103をまとめてNMR装置とすることができる。NMR装置は、市販のものを特に制限なく採用することができる。 なお、制御装置103は、データベース104の一部または全部を、その内部に一体的に備えて(記憶して)いてもよい。ユーザ端末105は、例えば、無線を介して制御装置103に接続するように構成されている。 磁石部101は、試料に磁場を与えるための装置である。磁石部101は、例えば、試料に磁場を与えるための磁石ユニットと、試料および後述する分光計102のプローブユニットを収容するための収容部を備える。