JP-2026077095-A - 表面被覆切削工具
Abstract
【課題】各種のステンレス鋼の切削加工でも優れた耐摩耗性と耐欠損性を有する表面被覆切削工具の提供 【解決手段】表面から順に表面層、TiO x (x=1.3~1.5)の酸化物層、Al 2 O 3 層、下部層からなり、 刃先稜線部のみAl 2 O 3 層が露出し、 Al 2 O 3 層が露出している刃先稜線部のすくい面側の端部をj=0とし、j=0からすくい面方向に表面層の平均厚さとTi酸化物層の平均厚さとの和に一致する最も刃先稜線に近いn番目まで、 測定間隔を1μmでn+1個の測定点jにおいて表面層の厚さとTi酸化物層の厚さとの和を測定するとき、 測定点jで測定された前記表面層の厚さと前記Ti酸化物層の厚さとの和であるt j に対し、△t j+1 =t j+1 -t j (j=0~n-1)で定義される漸増率△t j+1 は、 単調減少し、△t j+1 は0.02~0.10であり、nの最大値が1~20である表面被覆切削工具 【選択図】図2
Inventors
- 駒村 優
- 近藤 翔太
- 市川 龍
- 小関 秀峰
Assignees
- 三菱マテリアル株式会社
Dates
- Publication Date
- 20260513
- Application Date
- 20241025
Claims (2)
- 基体と該基体上に設けられた被覆層を有する表面被覆切削工具であって、 前記被覆層は、 平均厚さが0.20~0.50μmであるTiN、TiC、TiCN、TiNOのいずれかの化合物からなる表面層と、 前記表面層に接してその下方に平均厚さ0.20~1.50μmの式:TiO x (x=1.3~1.5)で表現される組成のTi酸化物層と、 前記Ti酸化物層に接してその下方にあるAl 2 O 3 層と、 前記Al 2 O 3 層と前記基体との間の下部層とからなり、 刃先稜線部のみ前記Al 2 O 3 層が露出しており、 前記Al 2 O 3 層が露出している前記刃先稜線部のすくい面側の端部をj=0とし、j=0から、前記すくい面方向に前記表面層の平均厚さと前記Ti酸化物層の平均厚さとの和と一致する最も前記刃先稜線に近いn(n≧1)番目まで、 測定間隔を1μmとして、n+1個の測定点jにおいて前記表面層の厚さと前記Ti酸化物層の厚さとの和を測定するとき、 前記測定点jで測定された前記表面層の厚さと前記Ti酸化物層の厚さとの和であるt j に対し、△t j+1 =t j+1 -t j (j=0~n-1)で定義される漸増率△t j+1 は、単調減少し、前記△t j+1 は0.02~0.10であり、前記△t j+1 が0.02~0.10を与える前記nの最大値が1~20である ことを特徴とする表面被覆切削工具。
- 前記下部層がTiCN層と該TiCN層と前記基体との間のTiN層であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
Description
本発明は、表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関するものである。 従来から、被覆工具としては、例えば、炭化タングステン(以下、WCで表す)基超硬合金等の基体に被覆層を形成したものが知られている。 そして、この被覆層の組成、層構造を調整することによって、切削性能がより一層向上した被覆工具を得る提案がなされている。 例えば、特許文献1には、α-Al2O3層の上部にTiCxNyOzまたはZrCxNyである被覆層を有し、該被覆層の刃先稜線部のみがα-Al2O3層が露出している被覆工具が記載され、該被覆工具は、特に、低炭素鋼やステンレス鋼の工作時に優れた耐逃げ面摩耗性と耐クレータ摩耗性を同時に発揮すると共に、被覆物のフレーキングの発生に対し高度の抵抗を発揮し、しかも作業者の裸眼により容易に使用切刃が区別できるとされている。 また、例えば、特許文献2には、被覆層が2~50μmの合計厚みを有し、下部層が炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタン、炭酸チタニウム及び酸化アルミニウムから選択された少なくとも1層及び外側の1~15μm厚みの酸化アルミニウム層またはAl2O3とZrO2の積層であり、中間層がTiO層、表面層がTiCxNyOz、単層または多層のTiN、TiC、TiCxNyのいずれかであり、刃先稜線部とすくい面では表面層が除去されている被覆工具が記載されている。 特開平8-52603号公報特開2006-297585号公報 本発明の一実施形態に係る表面被覆切削工具における被覆層の縦断面の模式図である。表面層およびTi酸化物層の厚さが連続的に繋がって漸増することを示す模式図である。 本発明者は、鋼や鋳鉄での切削加工での性能を担保しつつ、各種のステンレス鋼等の高速切削加工に供しても優れた耐摩耗性を有する切削工具を得るために被覆層、特に最表面層について鋭意検討を行った。 被覆層の表面層として、耐摩耗性を有し、工具刃先の使用前後の識別がしやすいようにTiNのような比較的明るい膜色の被覆層を成膜することがある。 本発明者らの検討によれば、このTiNのような比較的明るい膜色の表面層は被削材と直接接触するため、特に、ステンレス鋼の高速切削加工などの工具刃先が高温になる切削加工では、表面層と被削材が強固に付着(凝着が発生)し、表面層が剥離することがある。このとき、表面層とこの表面層の下層となるAl2O3層が強固に接着している被覆層では、表面層の剥離と共にAl2O3層が剥離して、摩耗が生じ、Al2O3層と基体との間の被覆層の構成によっては基体が露出することがあるため被覆工具の耐久性が損なわれてしまう。 そこで、先行技術文献に記載されているように、刃先稜線部において、前述のTiNのような比較的明るい膜色の表面層を機械加工により取り除くことが考えられる。しかし、この表面層を機械加工により完全に取り除くことは難しく、意図せずに表面層に凹凸を形成して残存してしまう。そして、切削加工中にこの残存する表面層に凝着物が押し付けられた際に応力集中が発生し、被削材と残存する表面層との間で凝着チッピングが発生してしまう。 本発明者らは、この凝着チッピングの発生を抑制すべく更に検討を重ねた。その結果、表面層の直下にTi酸化物層(TiOx(x=1.3~1.5))を設けると、凝着チッピングの起点となる箇所を抑制することを認識した。すなわち、次の(1)~(3)の知見を得て本発明を導出した。 (1)表面層とその下層となるAl2O3層との間にTi酸化物層(TiOx(x=1.3~1.5))を設けることにより、機械加工によって刃先稜線部の表面層の除去が容易になり、意図せず残存する表面層の凹凸を抑制することができること。 (2)Ti酸化物層(TiOx(x=1.3~1.5))は、靭性に富むため、刃先稜線部の表面層を除去する機械加工時に脆性破壊することがない。そして、表面層を機械加工により除去した刃先稜線部の端部において、表面層、Ti酸化物層およびAl2O3層が滑らかかつ連続的に繋がった構造を持たせることができること。 (3)前記(2)の刃先稜線部の端部おける滑らかかつ連続的に繋がった構造の刃先の刃先稜線部における凝着チッピングの発生を抑制することができる。 以下では、本発明の実施形態に係る被覆工具について、より詳細に説明することにより、本発明を説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲の記載において、数値範囲を「M~N」を用いて表現する場合、「M以上、N以下」と同義であって、その範囲は上限値(N)および下限値(M)の数値を含むものである。また、上限値(N)のみに単位が記載されているとき、上限値(N)および下限値(M)は同じ単位である。 1.被覆層 被覆層は、表面から基体に向かって、表面層、Ti酸化物層、Al2O3層および下部層からなる。以下、順に各層を説明する。 (1)表面層 表面層は、平均厚さが0.20~0.50μmであるTiN、TiC、TiCN、のいずれか化合物からなる層である。 TiN、TiC、TiCN、いずれか化合物からなる表面層は、いずれも耐摩耗性と、被覆工具の使用有無の識別が十分可能な色味とを有し、識別層として機能することができる。これらの表面層は、Ti酸化物層からの酸素の拡散により、意図せず酸素を含むことがあるが、意図しない酸素はいずれの物性にも影響を与えない。 表面層の平均厚さが、0.20~0.50μmであると、この識別層として機能を十分に発揮することができる。しかし、平均厚さが0.50μm超えると被覆層の耐チッピング性が損なわれる。平均厚さの下限は識別層としての機能が達成できればよいが、後述する製造方法の一例では、0.20μmが下限となる。 (2)Ti酸化物層 Ti酸化物層は、平均厚さは0.20~1.50μmである。その理由は、0.20μm未満では下層からの元素の拡散の影響により、Al2O3層と強固に付着してしまい、表面層の除去が容易でなくなる。1.50μmを超えると、被覆工具に衝撃が加わったときに容易に表面層が剥離してしまう。 Ti酸化物層は、式:TiOx(x=1.3~1.5)で表現される組成のTi酸化物からなる。x=1.3~1.5のTiOxが表面層の下部に存在すると、弱い機械加工より刃先稜線部の表面層を除去することができる。すなわち、xが1.3未満のとき、TiOxがAl2O3層と強固に付着してしまい、刃先稜線部の表面層の除去加工時にAl2O3層が欠けてしまう。xが1.5を超える場合、TiOxが脆化するため、刃先稜線部の表面層およびTi酸化物層を取り除くために刃先処理を施すとき、Ti酸化物層が脆性破壊してしまい、表面層やTi酸化物層が点在してしまう。 (3)Al2O3層 Al2O3層の平均厚さは特段の制約はない。しかし、被削材の種類や切削条件によって好ましい平均厚さがある場合がある。例えば、各種のステンレス鋼の高速切削を行うときは、平均厚さとして1.00~3.00μmが好ましい場合がある。その理由は、1.00μm未満であると、耐クレータ摩耗性が低下し、早期に寿命に至ることがある。3.00μmを超えると、Al2O3層自体が硬質なセラミックス層であるため、その層の厚さに比例した大きな亀裂が導入され耐欠損性が不足することがある。 (4)下部層 下部層は、Al2O3層と基体との間の層であり、単層であってもよいし、2以上の複数の層から構成されていてもよく、各層を構成する化合物にも特段の制約はない。 下部層として、下部層がTiCN層と該TiCN層と基体との間のTiN層とであってもよい。このTiCN層とiN層の平均厚さは、それぞれ、1.50~7.50μm、0.10~0.50μmが例示できる。下部層の別の例として、Tiの炭酸化物、Tiの炭窒酸化物、AlとTiの複合窒化物(炭窒化物)を示すことができる。 (5)意図しない化合物 被覆層の成膜は、前述の化合物以外の化合物が生じないように成膜を行うが、成膜条件のわずかな乱れ(例えば、温度変化、圧力変化等)により、これら化合物とは異なった化合物(意図しない化合物という)が意図せず部分的に生じる可能性がある。よって、特許請求の範囲および明細書において、「A層はX化合物からなる」というような記載していても、A層はX化合物の他にこの意図しない化合物が含まれていることがある。意図しない化合物は存在しても被覆層を構成する層のいずれの物性にも影響を与えないし、前述の解決課題は解決される。 2.刃先稜線部におけるAl2O3層の露出 刃先稜線部におけるAl2O3層の露出について、順に説明する。 (1)刃先稜線部 「刃先稜線」と「刃先稜線部」とは次のとおりのものである。すなわち、図1に示すように、逃げ面(1)とすくい面(2)とをそれぞれ直線で近似し、それらの直線を延長したときの両直線が交差する交点(3)である刃先稜線を求め、この刃先稜線から、基体表面に向かって最短となる線分を引き、この線分と基体表面の交点において、この線分と垂直に逃げ面(1)およびすくい面(2)の方向にそれぞれホーニング処理によって与えられる20~80μmの線分を引き、この線分を、前記最短となる線分と平行に基体表面に向かって投影した領域(4)を基体稜線部という。 ここで、刃先稜線部は被覆層を成膜する前に、耐チッピング性向上のために、工具基体形状に応じて、逃げ面およびすくい面の方向にそれぞれ20~80μmのホーニング処理を施すことがある(逃げ面およびすくい面の方向のホーニング処理長さは同じでなくてもよい)。 (2)Al2O3層の露出 Al2O3層は、刃先稜線部(定義は後述する)で露出している。そのため、切削加工中の表面層の剥離と共にAl2O3層が剥離して、摩耗が生じ、Al2O3層と基体との間の被覆層の構成によっては下部層も剥離して基体が露出するという被覆工具の耐久性が損なわれてしまうことが防止できる。 ここで、刃先稜線部においてAl2O3層は完全に露出している必要はなく、表面層またはTi酸化物層が合計の面積率で20%までの割合で残存していても前述の解決課題は解決できる。 (3)表面層およびTi酸化物層の厚さの漸増率(△tn) Al2O3層が露出している刃先稜線部のすくい面側の端部をj=0とし、 j=0から、 すくい面方向に表面層の平均厚さとTi酸化物層の平均厚さとの和と一致する最も刃先稜線に近いn+1(n≧1)番目まで、 測定間隔を1μmとして、n+1個の測定点jにおいて表面層の厚さとTi酸化物層の厚さとの和を測定するとき、 測定点jで測定された表面層の厚さとTi酸化物層の厚さとの和であるtjに対し、△tj+1=tj+1-tj(j=0~n-1)で定義される漸増率△tj+1は、 単調減少し、△tj+1は0.02~0.10であり、△tj+1が0.02~0.10を与える最大のnが1~20、すなわち、刃先稜線のすくい面側の端部からの距離Lが1~20μm(L=n×1μm)であることが好ましい。 ここで、単調減少とは△tj+1が増加しないことをいう(△tj+1が全て同じ値であってもよい)。また、表面層の平均厚さとTi酸化物層の平均厚さとの和と、n+1個の測定点jにおいて表面層の厚さとTi酸化物層の厚さとの和が一致するとは、以下の関係式を満たすことをいう。すなわち、 |(前記表面層の平均厚さと前記Ti酸化物層の平均厚さとの和)-(n+1個の測定点jにおける表面層の厚さとTi酸化物層の厚さとの和)|≦0.01(μm) である。 △tj+1の値が、0.02~0.10である理由は次のとおりである。△tj+1が0.02未満のとき、漸増部がなくなってしまい耐チッピング性が劣化する。一方、△tj+1が0.10を超えるとき、刃先稜線部において表面層の厚さが急峻に変化しているため、機械加工した刃先稜線部近傍の表面層に応力が集中しやすく、耐チッピング性が劣化