JP-2026077464-A - プロトプラストを用いる木本植物の植物体を製造する方法
Abstract
【課題】プロトプラストを用いる木本植物の植物体を製造する新たな方法を提供すること。 【解決手段】 以下の工程を含む、木本植物のプロトプラストを用いて前記木本植物の植物体を製造する方法: 工程1:前記木本植物のプロトプラストを担体に包埋して、プロトプラストを担持する担体を得る工程; 工程2:担体を培地に載置し、該担体中のプロトプラストに細胞壁を形成して分裂を開始し、前記木本植物の細胞塊を得る工程; 工程3:前記細胞塊を用いて、前記木本植物の植物体を得る工程。
Inventors
- 大澤 裕樹
Assignees
- 住友林業株式会社
Dates
- Publication Date
- 20260513
- Application Date
- 20241025
Claims (11)
- 以下の工程を含む、木本植物のプロトプラストを用いて前記木本植物の植物体を製造する方法: 工程1:前記木本植物のプロトプラストを担体に包埋して、プロトプラストを担持する担体を得る工程; 工程2:担体を培地に載置し、該担体中のプロトプラストに細胞壁を形成して分裂を開始し、前記木本植物の細胞塊を得る工程;及び 工程3:前記細胞塊を用いて、前記木本植物の植物体を得る工程。
- 担体がアガロースゲル粒である請求項1に記載の方法。
- 工程2における培地がアンモニア態窒素(NH 4 + )を含まない請求項1に記載の方法。
- 工程2における培地がペプチドホルモン及び/又は植物ホルモンを含む、請求項1に記載の方法。
- 工程2における培地がナース細胞を含む、請求項1に記載の方法。
- 工程2の工程開始時におけるプロトプラストの密度が、0.2×10 6 ~2.0×10 6 cells ml -1 である、請求項1に記載の方法。
- 工程2において、培地の交換が行われる、請求項1に記載の方法。
- 工程3が以下の工程の1つ又は2つ以上を含む、請求項1に記載の方法: 工程3A:工程2において得られた細胞塊を培養し、胚性カルスを得る工程; 工程3B:胚性カルスを分化させ、木本植物の組織を得る工程;及び 工程3C:木本植物の組織を培養して、前記木本植物の植物体を得る工程。
- 工程3Aにおける細胞塊の培養が、担体から移動された細胞塊により行われる、請求項8に記載の方法。
- 工程1における木本植物のプロトプラストの取得が、工程2の阻害物質を抑制して行われる請求項1に記載の方法。
- 木本植物がユーカリ属植物である請求項1~10のいずれかに記載の方法。
Description
本発明は、プロトプラストを用いる木本植物の植物体を製造する方法に関する。本発明は、木本植物のプロトプラストを取得する方法にも関する。 現在主流の植物のゲノム編集技術では、細胞壁のないプロトプラストなどの単一細胞を利用しないと遺伝子組み換え生物の規制を回避してゲノム編集生物を作ることが極めて困難である。外来DNAの導入やキメラ植物を回避して有用樹木品種をゲノム編集で効率良く改良するため、体細胞プロトプラスト1つから植物体を作る技術開発が再注目されている。 現在までに報告された植物プロトプラストから個体を再生させる技術が特定種あるいは品種に限定されており、ユーカリ属についてはいずれの種についても査読論文で報告されていない。 特許文献1(特許第2623320号公報)ではユーカリ、ポプラのプロトプラストからの個体再生が登録されており、ケナフのプロトプラストとの共培養と培養途中に個体培地から液体培地、個体培地へと移す工程を特徴とする請求項で構成されている。 しかしながら、特許文献1に記載の発明には、少なくとも以下の問題点がある: 1) プロトプラストから植物体を作る際の非効率性 2) 補助的に加える細胞とプロトプラストとの選別困難性 3) 植物体再生に必要な培養工程が3つに分かれる複雑性。 これらの問題点のため同発明には再生効率(及び再現性)に乏しい。 特許第2623320号公報 本発明の方法による、プロトプラストの細胞壁修復と細胞分裂の誘導により成長した細胞塊やカルスからの個体再生までの工程の概念を写真により示す図である。ユーカリ属植物の組織から得たプロトプラストの例を示す写真図である。本発明の方法における、プロトプラストを支持担体に固定した例を示す写真図である。円形により示されている構造体(1)が支持担体である。本発明の方法により得られた細胞塊の例を示す写真図である。本発明の支持担体の効果を示す例の写真図である。ナース細胞としてコムギ培養細胞がイネ培養細胞よりもユーカリプロトプラストの初期分裂に対して正の効果を示す傾向を示すことを確認した例を示す写真図である。ユーカリ・ペリタのプロトプラストからマイクロカルス化した組織を継代してカルス化を促進する上で、ソフトアガーを含む0.5 mg L-1 ゼアチン(Zeatin)含有MS, N6Z 基本培地へ移植するより、McCown の木本植物用培地(Woody Plant Medium; WPM)を基本組成とし、1 mg L-1チジアズロン(TDZ) , ゼアチンをサイトカイニンとして含有し、3 mg L-1 1-ナフタレン酢酸(NAA)をオーキシンとして含有する通常寒天を用いた固形培地に移植する方が細胞塊の継続した増殖成長とカルス形成と胚性シュートの形成に適することを示す例の写真図である。本発明の工程1を経て得られた細胞塊が、細胞の分裂(増殖)の度合いが優れていることを示す例の写真図である。本発明の方法により、プロトプラストから得た胚性シュート性カルスからシュートを伸長させた例を示す写真図である。本発明の方法により、プロトプラストから得た胚性シュート性カルスから個体を再生させた例を示す写真図である。ユーカリの2樹種それぞれから胚性カルスやシュート形成能を持つカルスが誘導されたことを示す写真図である。ユーカリ・ペリタのカルスの培養により、メリステロイド様の増殖性シュートが生じた例を示す写真図である。 以下、本発明において用いられる成分、成分の量及び作用・機能について説明し、本発明についてさらに詳細に説明する。 本発明の方法は、以下の工程を含む、木本植物のプロトプラストを用いて前記木本植物の植物体を製造する方法である: 工程1:前記木本植物のプロトプラストを担体に包埋して、プロトプラストを担持する担体を得る工程; 工程2:担体を培地に載置し、該担体中のプロトプラストに細胞壁を形成して分裂を開始し、前記木本植物の細胞塊を得る工程;及び 工程3:前記細胞塊を用いて、前記木本植物の植物体を得る工程。 すなわち、本発明の方法は、 カプセル様の担体にプロトプラストを埋め込むことにより、プロトプラストの適切な密度を維持し、 一貫した培養系で最適に配合した培地をタイミングよく交換することを可能にすることにより、培養された木本植物のプロトプラストから大量に個体を再生する系 を用いるものである。 本発明は、以下の特徴の1つ又は2つ以上を有する: ・プロトプラストからユーカリ等の木本植物の個体を再生する方法を、 1) 一定のプロトプラスト密度での3次元的な担体固定と、 2) 特別な組成で調製した培地の複数の交換ステップと、 3) ペプチド性の成長調節物質の外部からの添加、 の組み合わせを具備することにより、再現性のある形で確立した。 ・本発明の木本植物の植物体を製造する方法は、液相を含む複雑な培養工程を、支持担体(本明細書において単に「担体」と記載することがある)を含む固相のみによる簡素な培養工程に簡素化し、作業工程の短期化及び再生効率の向上を達成したものである。 <工程1> 工程1は、増殖の対象である木本植物のプロトプラストを担体に包埋して、プロトプラストを担持する担体を得る工程である。当該担体は、プロトプラストの分裂開始及び分裂の継続による細胞塊化に資するものである。 用いられるプロトプラストは、本発明の所期の効果が奏されるプロトプラストであれば限定されない。プロトプラストは、公知の方法により得てよいところ、例えば下記文献に記載の方法が例示される: Kirby, E.G., Campbell, M.A., Penchel, R.M. (1989). Isolation and Culture of Protoplasts of Forest Tree Species. In: Bajaj, Y.P.S. (eds) Plant Protoplasts and Genetic Engineering I. Biotechnology in Agriculture and Forestry, vol 8. Springer, Berlin, Heidelberg. https://doi.org/10.1007/978-3-642-73614-8_18; Teulleres, C., Boudet, A.M. Isolation of protoplasts from different Eucalyptus species and preliminary studies on regeneration. Plant Cell Tiss Organ Cult 25, 133-140 (1991). https://doi.org/10.1007/BF00042184。 プロトプラストの担体への包埋は本技術分野における通常の方法により行ってよい。該包埋は、例えば、40℃前後に保温した培地組成と同一となる1-3%低融点アガロースゲル溶液に懸濁したプロトプラストをピペットを用いてシャーレ上に置床し、固化させる方法によって行ってよい。 工程1において用いられる担体の組成及び形状は、本発明の所期の効果が奏される組成や形状であれば限定されない。 工程1に用いられる担体の組成として、寒天、アガロース、ゲランガム、アルギン酸塩が例示される。 工程1に用いられる担体として、アガロースゲル粒は好ましい。低融点アガロースへの包埋は、細胞分裂割合や細胞塊の形成数の観点からとくに好ましい。 工程1に用いられる担体の形状や大きさは限定されず、略球形であり、最大径が約4~約12mmであってよい。 工程1において、担体に包埋されるプロトプラストの播種密度は本発明の所期の効果が奏されれば限定されない。かかる密度の例として、0.2×106~2.0×106 cells ml-1が例示される。 <工程2> 工程2は、工程1で得られた担体を培地に載置し、該担体中のプロトプラストに細胞壁を形成して、前記木本植物の細胞塊を得る工程である。 担体の培地への載置は、液体培地に該担体の全体をほぼ浸漬することにより行ってよい。 細胞塊を得る方法は限定されず、プロトプラストを単離した由来組織(胚性カルス、多芽性カルス)を所定の培養条件(プロトプラスト密度、浸透圧、コンタミネーション)において、細胞培養と継代とを1ヶ月~3ヶ月間、好ましくは1.5-2.5 ヶ月継続して細胞塊を得てよい。 プロトプラストからの初期細胞分裂の継続の有無は組織培養系統によって大きく異なる。1細胞からの個体再生の大きな障壁が細胞塊化にあり、受精卵を用いた個体再生と異なり、分化の進んだ体細胞1個からの個体再生は細胞塊形成までの初期の細胞分裂が重要である。本発明によるプロトプラストからの細胞分裂誘導と細胞塊形成はカルス形成を経た個体再生までの初期の大きな障壁を克服して、細胞融合から個体を再生して優良系統を作出するための重要な突破口になり得る。 工程2に用いられる培地は、栄養塩、ビタミン、アミノ酸、2,4-Dやジカンバなどの合成オーキシンとゼアチン、BAPなどのサイトカイニン、グルコースやスクロースやマルトースなどを含み、本発明の所期の効果が奏される培地であれば限定されない。かような培地の例として、KM(KAO & MICHAYLUK)培地, MS(MURASHIGE & SKOOG)培地, B5(GAMBORG)培地、CHU (N6)培地が例示される。これらはアンモニア態窒素不含培地から、アンモニア態窒素含有培地への交換を含む。 プロトプラストからの細胞の生成時の浸透圧を低下させて、細胞塊を誘導することは好ましい。かかる浸透圧として、プロトプラストからの細胞壁の生成時の500~700 mOsm/kgH2O から300~500 mOsm/kgH2Oに低下させて細胞塊を誘導することが例示される。 工程2における培地として、アンモニウム態窒素(NH4 +)を実質的に含まないアンモニア不含改変培地は、望ましい。特に培養開始から2週間あるいは4週間のアンモニア塩の除去がより好ましい。 工程2における培地として、ペプチドホルモンを含む培地は好ましく、ペプチドホルモンとしてファイトスルフォカインはとくに好ましい。これらの物質を用いることにより、プロトプラスト由来の細胞分裂が促進される。 ファイトスルフォカインは培養細胞の細胞分裂を促進する物質であるところ、プロトプラストの細胞塊化における効果は知られていなかった。ファイトスルフォカインの培地における濃度は限定されないところ、約0.1 ~約1 μMの濃度が例示され、約0.3 ~約0.8 μMの濃度は好ましく、約0.5 μMの濃度はより好ましい。 植物ホルモンとして、オーキシン及びサイトカイニンが挙げられ、オーキシンを用いる本発明の方法は好ましい。 植物ホルモンの培地における濃度は限定されないところ、2,4-D について0.1-1.0 (0.45) μM, ゼアチンについて0.2-2.0 (0.91) μMが例示される。 工程2における培地として、ナース細胞を含む培地も好ましい。ナース細胞を用いることにより、プロトプラストの細胞化が促進される。 ナース細胞として、コムギ培養細胞及びイネ培養細胞が例示され、コムギ培養細胞は好ましい。 工程2において細胞塊を得るために播種されるプロトプラストの密度は、本発明の所期の効果が奏される密度であれば限定されない。該細胞の密度の例として、0.2×106~2.0×106 cells ml-1が挙げられる。 工程2において、培地の交換を行うことは好ましい。よりフレッシュな培地への交換を行うことにより、同時に阻害物質を培地から取り除くことで、より