JP-2026514811-A - ポリアクリロニトリル系炭素繊維、前駆体繊維、及びそれらの製造方法
Abstract
ポリアクリロニトリル系炭素繊維及びポリアクリロニトリル前駆体、並びにその製造方法を開示する。ポリアクリロニトリル系炭素繊維は、その表面に溝構造を有し、表面の突起の頂部から溝の底部までの領域Xにおける炭素繊維のSi/C比率は1%~10%の範囲にあり、溝の底部から内部100nm以内での領域YにおけるSi/C比率は0.1%~1%の範囲にあり、100nmを超える領域Zにおける炭素繊維のSi/C比率は0.06%を超えない。本発明はさらに、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ポリアクリロニトリル前駆体、及びポリアクリロニトリル前駆体の製造方法を提供する。製造された炭素繊維は灰分が低く、高性能である。
Inventors
- 沈志剛
- 王建寧
- 李磊
- 王賀団
Assignees
- 中国石油化工股▲ふん▼有限公司
- 中石化(上海)石油化工研究院有限公司
Dates
- Publication Date
- 20260513
- Application Date
- 20231229
- Priority Date
- 20230418
Claims (18)
- その表面に溝構造を有するポリアクリロニトリル系炭素繊維であって、繊維表面の突起の頂部から溝の底部までの領域Xの前記炭素繊維のSi/C比率が1%から10%の範囲にあり、前記溝の底部から内部100nmまでの領域YにおけるSi/C比率が0.1%から1%の範囲にあり、かつ100nmを超える領域ZのSi/C比率が0.06%を超えないことを特徴とする、ポリアクリロニトリル系炭素繊維。
- 前記ポリアクリロニトリル系炭素繊維が、湿式紡糸により調製されたポリアクリロニトリル前駆体繊維から得られることを特徴とする、請求項1に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
- 前記炭素繊維における総シリコン含有量が500ppmから1500ppmであること、及び/又は 前記繊維表面の突起の頂部から前記溝の底部までの前記領域XのSi/C比率が、前記溝の底部から内部100nmまでの前記領域YのSi/C比率の8.5倍以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
- 前記繊維表面の突起の頂部から内部100nmまでの前記領域X及び前記領域Yに存在する細孔の数が20個未満、好ましくは16個未満であり;前記細孔が10nmから50nmの平均長さ、及び5nmから25nmの平均幅を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
- 小角X線散乱法により得られた前記細孔の繊維軸方向に沿った配向偏差角が4°以下であること;及び/又は 前記炭素繊維が5.6~5.8GPaの引張強度、360~390GPaの引張弾性率、及び1.45~1.6%の破断伸びを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維。
- ポリアクリロニトリル系炭素繊維、好ましくは請求項1から5のいずれか一項に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法であって、ポリアクリロニトリル前駆体繊維を炭化して前記ポリアクリロニトリル系炭素繊維を得る工程を含み;前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維の繊維表面の突起の頂部から内部2μmまでの領域のSi/C比率が1.0%から20%の範囲にあり、かつ2μmを超える領域のSi/C比率が0.15%を超えないことを特徴とする、方法。
- 前記前駆体繊維の油分含有量が0.5%~2.5%、好ましくは0.8%~2.5%、好ましくは0.8%~2.4%、より好ましくは0.9%~2.0%であること;及び/又は、 前記前駆体繊維のシリコン含有量が0.01%~0.5%であること;及び/又は、 前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維の単繊維線密度が0.7~1.0dtexであること;及び/又は、 前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維が湿式紡糸によって調製されることを特徴とする、請求項6に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- 前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維が湿式紡糸によって調製され、かつ、オイリング工程を含み、前記オイリング工程は、2つのオイリング手順を連続して含み、前記2つのオイリング手順の間に乾燥緻密化段階を設定せず;第1のオイリング手順は、シリコンフリー油剤、低シリコン油剤、又はそれらの組み合わせを使用し、第2のオイリング手順は、シリコン含有油剤を使用することを特徴とする、請求項6または7に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- 前記第1のオイリング手順は、シリコンフリー油剤、低シリコン油剤、又はそれらの組み合わせを、重量濃度0.1%~5.0%で使用し;前記第2のオイリング手順は、シリコン含有油剤を、重量濃度0.1%~5.0%で使用すること;及び/又は、 前記シリコンフリー油剤、前記低シリコン油剤及び前記シリコン含有油剤の平均粒子径が、それぞれ独立して50nm~500nmであること;及び/又は、 前記第2のオイリング手順に使用された前記シリコン含有油剤のシリコン含有量が0.01重量%~0.9重量%であること;及び/又は、 前記第2のオイリング手順の滞留時間が、前記第1のオイリング手順の滞留時間よりも短いことを特徴とする、請求項8に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- 前記シリコンフリー油剤又は前記低シリコン油剤と前記シリコン含有油剤との間のpH差が1以下であること;及び/又は、 前記シリコンフリー油剤又は前記低シリコン油剤中の界面活性剤の極性が、シリコン含有油剤中の界面活性剤の極性と反対でないことであり、好ましくは前記シリコン含有油剤が非イオン性界面活性剤を含む油剤であることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- オイリング前の、水洗浄後の前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維の繊維膨潤度が80%から150%であることを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- ポリアクリロニトリルストック溶液の湿式凝固成形、凝固延伸、温水延伸、水洗浄、オイリング、乾燥緻密化、蒸気延伸、及びスチームヒートセッティングを行って前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維を得る工程を含むことを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- 前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維を予備酸化処理及び炭化に供することにより、前記ポリアクリロニトリル系炭素繊維が得られることを特徴とする、請求項6から12のいずれか一項に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- 前記予備酸化処理は、空気雰囲気中で行い、その温度は170~300℃であり、総延伸比率は5%以下であること、及び/又は、 前記炭化は、不活性雰囲気中で温度が300~750℃でありかつ延伸比率が0~4%の総延伸比率である低温炭化処理、及び、不活性雰囲気中で温度が800~1500℃でありかつ延伸比率が-4%~-2%の総延伸比率である高温炭化処理を含むことを特徴とする、請求項13に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法。
- ポリアクリロニトリル前駆体繊維であって、前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維の繊維表面の突起の頂部から内部2μmまでの領域のSi/C比率が1.0%から20%の範囲にあり、かつ2μmを超える領域のSi/C比率が0.15%を超えないことを特徴とする、ポリアクリロニトリル前駆体繊維。
- 前記前駆体繊維の油分含有量が0.5%~2.5%、好ましくは0.8%~2.5%、好ましくは0.8%~2.4%、より好ましくは0.9%~2.0%であること;及び/又は、 前記前駆体繊維のシリコン含有量が0.01%~0.5%であること;及び/又は、 前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維の単繊維線密度が0.7~1.0dtexであること;及び/又は、 前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維が湿式紡糸によって調製される、請求項15に記載のポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体繊維。
- 湿式紡糸を含み、かつ、オイリング工程を含む、ポリアクリロニトリル前駆体繊維、好ましくは請求項15又は16に記載のポリアクリロニトリル前駆体繊維の製造方法であって、前記オイリング工程は、2つのオイリング手順を連続して含み、前記2つのオイリング手順の間に乾燥緻密化段階を設定せず;第1のオイリング手順は、シリコンフリー油剤、低シリコン油剤、又はそれらの組み合わせを使用し、第2のオイリング手順は、シリコン含有油剤を使用する、方法。
- 前記第1のオイリング手順は、シリコンフリー油剤、低シリコン油剤、又はそれらの組み合わせを、重量濃度0.1%~5.0%で使用し;前記第2のオイリング手順は、シリコン含有油剤を、重量濃度0.1%~5.0%で使用すること;及び/又は、 前記第2のオイリング手順の滞留時間が前記第1のオイリング手順の滞留時間より短いこと;及び/又は、 前記シリコンフリー油剤、低シリコン油剤、及びシリコン含有油剤の平均粒子径が、それぞれ独立して50nm~500nmであること;及び/又は、 前記第2のオイリング手順に使用された前記シリコン含有油剤のシリコン含有量が0.01重量%~0.9重量%であること;及び/又は、 前記シリコンフリー油剤又は前記低シリコン油剤と前記シリコン含有油剤との間のpH差が1以下であること;及び/又は、 前記シリコンフリー油剤又は前記低シリコン油剤中の界面活性剤の極性が、シリコン含有油剤中の界面活性剤の極性と反対でないことであり、好ましくは前記シリコン含有油剤が非イオン性界面活性剤を含む油剤であること;及び/又は、 オイリング前の、水洗浄後のポリアクリロニトリル前駆体繊維の繊維膨潤度が80%から150%であること;及び/又は、 前記製造方法は、ポリアクリロニトリルストック溶液の湿式凝固成形、凝固延伸、温水延伸、水洗浄、オイリング、乾燥緻密化、蒸気延伸、及びスチームヒートセッティングを行い、これにより前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維を得る工程を含む、ことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
Description
発明の詳細な説明 〔技術分野〕 本発明は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維及びその製造方法に関する。本発明はさらに、炭素繊維を製造するためのポリアクリロニトリル系炭素繊維の前駆体繊維及びその製造方法に関する。 〔背景技術〕 炭素繊維は炭素含有量が90%以上の無機高分子繊維材料であり、該炭素繊維は、安定した化学構造を有し、高強度、高弾性率、及び低密度という特性を有し、優れた耐熱性、耐食性、低熱膨張係数、優れた熱伝導性、良好な化学的安定性、導電性などの複数の優れた特性を有する。炭素繊維は高性能複合材料の補強材として使用することができ、航空宇宙、建築補強、スポーツ用品、自動車構造、風力発電ブレード、太陽光発電産業、医療機器などの分野で広く利用されている。しかし、航空宇宙及び高性能機器の継続的な発展は、炭素繊維材料に新たな性能要求を課しており、炭素繊維に対する要求は、強度及び弾性率などの基本指標に限定されない。特に航空宇宙分野の応用では、炭素繊維に対して灰分含有量の要求が求められている。 炭素繊維特性は主に欠陥により影響を受ける。良質な油剤及び合理的なオイリング手順は欠陥発生を防止する有効な手段である。PAN前駆体繊維を特化した油剤の使用により処理した後、繊維表層に耐熱性に優れた保護膜が形成され、これにより、単繊維同士が分離され、予備酸化プロセスでの付着及び二重化が防止される。現在、高性能の炭素繊維前駆体繊維の製造プロセスでは、シリコン含有油剤が主に使用されている。シリコン含有油剤中のシリコン含有成分の一部は高温での分解性能が低く、その結果、予備酸化及び炭化プロセスにおいてシリコン成分が完全に分解されず、そして、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの不純物が生成され、不純物は炭素繊維内部に残留する。また不純物は延伸又は曲げ加工時に繊維の弱点となる可能性があり、これにより、炭素繊維の品質に深刻な影響を及ぼす。また、予備酸化及び炭化プロセス中に生成された酸化ケイ素は、これらのプロセスにおける灰分の主原因である。この灰分は設備を汚染させることにより生産サイクル及び耐用年数を短縮させるだけでなく、稼働時間を短縮させることにより設備清掃のために頻繁な停止が必要となる。 炭素繊維の製造に使用できる前駆体繊維は多数存在する。現在市場に出回っている炭素繊維の約90%以上はPAN繊維から製造されている。PAN系炭素繊維は炭素収率が高く、機械的特性に優れ、製造プロセスが確立されているなどの特徴を有し、炭素繊維の主力製品となっている。現在、PAN繊維は主に湿式紡糸及びドライジェット湿式紡糸によって製造されている。ドライジェット湿式紡糸のプロセスでは、溶液が紡糸口金から押し出された後、まずエアセクションを通過し、その後凝固浴に入って凝固及び成形され;この操作は溶液系からのドライジェット湿式紡糸と湿式紡糸との間では、紡糸プロセスから紡糸装置に至るまで大きな違いを生じさせ、また、得られる前駆体繊維及び炭素繊維の形態及び構造も異なる。ドライジェット湿式紡糸での炭素繊維は滑らかな表面でかつより緻密な構造を有するのに対し、湿式紡糸法での表面は明らかな溝の構造が存在する。この溝構造では、突起の頂部と溝の底部との高さ差が数十ナノメートルに達することがあり、この凹凸の溝構造が欠陥として作用し、炭素繊維の破断を引き起こす。したがって、湿式紡糸及びドライジェット湿式紡糸での炭素繊維の破断に悪影響を及ぼす主な構造的特徴もまた異なる。PAN繊維の製造プロセスにおいて、ドライジェット湿式紡糸と比較すると、湿式紡糸プロセスはより成熟しており、紡糸プロセスは安定して制御しやすく、繊維中の残留溶剤は除去されやすく、調製された炭素繊維は複合材料との組み合わせが容易である。このため、湿式紡糸プロセスは高性能炭素繊維前駆体繊維を製造する重要な方法である。 高品質な炭素繊維前駆体繊維には、表面欠陥の最小化、細孔構造の最小化、緻密な構造、優れた伸展性、高い耐熱性などの特性が求められる。優れた特性と制御可能なシリコン含有量及び浸透性を備えた高品質炭素繊維を製造するために、前駆体繊維が低シリコン含有量、低シリコン浸透性、繊維表面への油膜の良好な均一被覆性を有する必要がある。炭素繊維前駆体繊維の製造プロセスにおいて、凝固プロセスは二重拡散プロセスであるため、新生繊維には複数の孔を含む。これらの孔の一部は、その後の延伸及び水洗浄プロセス中に次第に減少あるいは閉鎖する。閉鎖されなかった孔は、シリコン含有油剤によるオイリング手順で浸透される可能性がある。その後の乾燥緻密化手順において、孔が閉鎖し、孔内のシリコン含有油剤を完全に除去することが困難になり繊維内に残留する可能性がある。そして、順次より多くの灰分が炭化プロセスにおいて生成し、浸透したSiを完全に除去することが困難になり炭素繊維内に残留し、これにより、最終的な炭素繊維の性能に悪影響を及ぼす。 したがって、高品質な油剤及び合理的なオイリング手順の選択は、低灰分高性能ポリアクリロニトリル系炭素繊維及び炭素繊維前駆体繊維を製造する上で重要な操作である。 CN113597484Aは、油剤の繊維表層及び表面空隙への浸透を抑制する炭素繊維の製造方法を開示している。この方法では、SIMS(secondary ion mass spectrometry)(二次イオン質量分析法)を用いて繊維表面から一定深さにおけるSi/C比率を算出する。この出願では、この発明が湿式紡糸炭素繊維の強度を向上させるためには使用できないと明記されている。さらに、湿式紡糸は一般的に多段凝固プロセスを取り入れ、凝固浴の濃度、温度、及び浸漬時間はドライジェット湿式紡糸とは全く異なる。したがって、CN113597484Aに記載されたドライジェット湿式紡糸の凝固条件及び空気中滞留時間の発明的特徴は、湿式紡糸炭素繊維前駆体繊維の製造には適用できず、湿式紡糸工程における油剤の繊維表層への侵入を抑制できず、繊維間接着及び炭素繊維表層の空隙も抑制できない。さらに、ドライジェット湿式紡糸と比較すると、湿式紡糸された新生繊維は繊維構造が緩く、繊維内の細孔が大きく、オイリングプロセス中に油剤が繊維の内部に浸透しやすくなる。このため、Si浸透を抑制し炭素繊維の性能を向上させる目的を達成するために、新たな方法が必要である。 CN111088559Aは、第1のオイリング手順が超低シリコン油剤又はシリコンフリー油剤を使用し、第1の乾燥緻密化後に第2のオイリング手順が、炭素繊維の断糸過多、機械的特性不良、及び低炭素炉のコークス排出量が多いという問題を解決するために使用される、一般的なシリコン含有油剤を使用するオイリング方法を開示している。 CN114622417Aは、炭素繊維用のシリコン含有油剤を開示している。この油剤は、前駆体繊維とローラーとの間の摩擦ダメージを低減させ、繊維の均一な予備酸化を確保し、炭化された単繊維の付着や二重化を抑制できるが、炭化された灰分及び炭素繊維中の不純物に関する問題については言及していない。 CN112424418Aは、炭素繊維用のシリコン含有油剤を開示している。この出願は、前駆体繊維の紡糸プロセス中の毛羽立ち問題を解決し、炭素繊維を効果的に保護できるが、得られた炭素繊維の強度が低く、炭化の灰分及び炭素繊維中の不純物に関する問題についても言及していない。 CN112726207Aは、炭素繊維前駆体繊維製造用のシリコンフリー油剤を開示している。これは灰分を生じにくく、炭化炉などの設備へのダメージを大幅に低減させるが、得られる炭素繊維は強度及び弾性率が低く、高強度かつ高弾性率の炭素繊維の製造プロセスには適さない。 CN110863270Aは、高強度のポリアクリロニトリル系炭素繊維の灰分を低減させる方法を開示している。この方法は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維を有機溶剤含浸処理及びフッ化水素酸処理に供する工程を含むが、この方法は炭素繊維の引張弾性率などの特性に悪影響を及ぼす。 CN103290527Aは、ポリアクリロニトリル系炭素繊維の灰分を低減させる方法を開示している。この出願は、第四級アンモニウム化修飾共重合系に基づき、より高い親水性を有するPAN紡糸溶液を調製する。その後、前駆体繊維のオイリング前の膨潤度を制御し、低シリコン油剤を導入することにより、ストランドの油含有量を制御する。しかし、この出願の改質共重合系は、高性能の炭素繊維の調製には適さない。 従来技術において、高性能の炭素繊維の湿式紡糸製造では、炭素繊維の灰分低減が炭素繊維の性能低下を招くことが多かった。 〔発明の開示〕 本発明の発明者らは、詳細な研究を通じて、油剤が繊維内に大量に浸透及び分散することが、後続の予備酸化及び炭化プロセスにおける過剰な灰分の主因であり、また最終的な炭素繊維中の不純物含有量を高め、炭素繊維の性能を損なうことを発見した。一方、前駆体繊維の表層におけるSi含有量が低すぎると、予備酸化プロセス中に二重化、付着、過剰な断線などの問題が生じやすく、最終的に炭素繊維の性能を低下させる。本発明の発明者らは、さらなる詳細な研究を通じて、炭素繊維におけるシリコンの浸透深度と勾配を制御することが、炭素繊維の高性能かつ低い灰分を良好に両立させ、これにより、低い灰分かつ高性能な炭素繊維を得られることを発見した。これにより、本発明が完成した。 本発明により解決される第1の技術的課題は、従来技術の湿式紡糸における炭素繊維の灰分低減が、最終的に製造された炭素繊維の機械的特性の低下をもたらすことである。したがって、本発明は、低灰分高性能ポリアクリロニトリル系炭素繊維を提供し、該炭素繊維において、シリコンは繊維表面に特定の浸透勾配を有しかつ特定のシリコン含有量を有し、このため、炭素繊維の機械的特性を向上させることができるいっぽうで、炭素繊維の灰分を低減させることができる。 本発明により解決される第2の技術的課題は、上記第1の技術的課題の解決に対応する低灰分高性能炭素繊維の調製方法を提供することである。該方法は、炭化プロセスにおいて灰分が少ない(設備の灰分洗浄のための停止が、半年又はそれよりも長い期間にわずか一度で済む)という特徴を有し、調製された炭素繊維はシリコン不純物含有量が低く、炭素繊維は強度、弾性率、及び伸びに優れている。 本発明により解決される第3の技術的課題は、上記第1の技術的課題の解決に対応する低灰分高性能炭素繊維を調製するためのポリアクリロニトリル前駆体繊維を提供することである。 本発明により解決される第4の技術的課題は、上記第3の技術的課題の解決に対応するポリアクリロニトリル前駆体繊維の製造方法を提供することである。 本発明は、その表面に溝構造を有するポリアクリロニトリル系炭素繊維であって、前記繊維において、前記表面の突起の頂部から溝の底部までの領域Xの前記炭素繊維のSi/C比率が1%から10%の範囲にあり、前記溝の底部から内部100nmまでの領域YにおけるSi/C比率が0.1%から1%の範囲にあり、かつ100nmを超える領域ZのSi/C比率が0.06%を超えないことを特徴とする、ポリアクリロニトリル系炭素繊維を提供する。 本発明はまた、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、好ましくは本発明のポリアクリロニトリル系炭素繊維の製造方法であって、ポリアクリロニトリル前駆体繊維を炭化して前記ポリアクリロニトリル系炭素繊維を得る工程を含み;前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維において、繊維表面の突起の頂部から内部2μmまでの領域のSi/C比率が1.0%から20%の範囲にあり、かつ2μmを超える領域のSi/C比率が0.15%を超えないことを特徴とする、方法を提供する。 本発明は、ポリアクリロニトリル前駆体繊維であって、前記ポリアクリロニトリル前駆体繊維において、繊維表面の突起の頂部から内部2μmまでの領域のSi/C比率が1.0%